アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

末っ子

早起きして京都へ。

父の命日を前に、姉とお参りである。

父が逝ったあの日も京都は酷く暑かった。

ギラギラ照りつける太陽の中で、ぼんやり兄の挨拶を聞いたことだけがやたら印象に残っている。

今日は2人だけだったので、お経をふたつあげてもらい、40分ほど、居眠りしながら聞いていた。

終わったあと、ご住職が、かつて下間の家にあった財宝の話をしてくれた。

私たちはほぼ記憶なし。

ぜんぶ父が売っぱらってしまったものだ。

まったく、下間家にとって、父ほどの戦犯はいないのだ。

お参りのあと、河原町まで出て、リッツカールトン京都に向かった。

リッツカールトン京都はかつてホテルフジタのあったところ。

懐かしい思い出の場所である。

庭にある小さな滝は、リッツになった今も残されていた。

アホみたいに高いメニューを睨みつつ、2人でクラブハウスサンドウィッチとパスタを頼んでシェアする。

姉と2人でランチするなんて、いつぶりだろうか。

このアホみたいに高いリッツに来たのには訳がある。

先日お世話になった嘉祥窯の2代目が作った器が、ここでお洒落なスイーツとして提供されているのだ。

マンゴーとキャラメルのジェラートやライチの入ったデザート。

2100円もする逸品(笑)どんだけ高級やねん。

とまぁ、ブツブツ言いながらも、美味しく頂戴した。

結局、姉にご馳走になった。

なんだかんだゆーても、私は妹の身で、可愛がられておるのだ。有難いことである。

日盛りの中、50女が、バイバーイと手を振って別れる。

心はいつまで経っても子供のままだ。

京阪電車のプレミアムカーに乗り、姉のこと、兄のこと、両親のことを想う。

気持ち悪い話だが、涙が溢れて来て仕方なかった。

東京で活動していた頃、兄は公演があれば家族や友人を連れて観に来てくれた。

今はNATSの公演を姉が友達を連れて来てくれる。

「トヨコすごいね〜」

喜んで応援してくれる。

赤ちゃんの時の私のアルバムは、兄が綺麗にまとめてくれたもの。

私を抱っこした兄が写る1枚には、こんなコメントが添えられていた。

「美人になるぞ」

全然美人にはならなかったけど、兄と姉に愛されて育った。

やっぱり泣けてくる。

なぜお兄ちゃんは死んだのだろう。

妹たちが悲しむこと、わかってたのに。

父の命日のあとは、まもなく兄の命日がやってくる。

「あいつは自分の子供たちより、とみちゃん、とよちゃんの自慢ばかりしてたよ」

兄のお友達に葬式のときに言われたことを思い出す。

あ、あかんあかん。

父のことを想わず、兄のことばかり想ってしまった(笑)

あーあ。

いつまで経っても悲しみは消えないわ。

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