アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

はじめましてじゃないけれど

13時55分。新大阪駅中央改札口。

マスクを付けた若者が会釈しながらやってきた。

こんにちは。下間です。

はじめまして、では無い。

パソコンの画面を通して、何度も会っている間柄である。

私のオンラインレッスンの生徒さんだ。

コロナ自粛中に、私はFacebook上のあるグループでオンラインレッスンを呼びかけた。

一般の方の話し方レッスンは3人。

そして、唯一、ナレーションレッスンをやることになったのが彼。

横浜の子である。

大阪のナレーターに教わるという発想も不思議だが、これもご縁なのだろう。

そして、今日初めてリアルに対面した。

オンラインでも男前だとは思っていたが、実際に会うと明るく、よく喋る好青年で、笑ったときにできる目尻のシワが、その性格を物語っている。

レッスンのときには大して雑談をしないので、新大阪から地下鉄で移動する間、色々と初耳の情報を彼から聞いた。

いま、住んでいる場所、仕事のこと、家族のことなど。

さて、今日彼が大阪に来たのはなぜかというと、ボイスサンプル の収録のためである。

東京で録音すれば良いことなのだが

出来れば教えてもらった私にディレクションしてもらい、私の信頼するスタジオで録音してもらいたい。

とのことで、わざわざ交通費と時間をかけてやってきた。

一生懸命に頑張る子はついつい応援したくなる。

そして、いつもお世話になっているスタジオの社長やスタッフもやはり同じ気持ちで、格安でしかも時間をかけて協力してくれた。

みんなお人好し(笑)

しかし、甲斐あって、なかなか良いサンプルがしあがり、彼も満足気。

夕方には終了したが、このままポイと帰すのも躊躇われたので、飲みに行く予定だった友人の了解を得て連れて行った。

その友人もやっぱりお人好しなのだ。

オトンとオカンみたいな2人と共に飲む若者。

なんだかとても不思議な夜。

偶然が重なって生まれる人間関係である。

20時近くまで一緒に食事をし、彼は神奈川県へと戻っていった。

ところで、今日のボイスサンプルの中で、私のグッジョブと言っていいことが1つある。

リアルに対面して閃いたのだが

彼の男前っぷりに、戦争に向かう若者の澄んだ瞳に似たものを感じた。

それで、急遽

出征のときに両親へ書いた手紙みたいなのを朗読してみれば?

と、提案。

すると、本当にとても良い朗読をするではないか。

その読みには、私だけでなくスタジオの社長も

「いいやん」

この閃きは、オンラインでは降ってこなかったと思う。

リアルだからこそ。体温を感じたからこそ。

なのだと思う。

27歳。まだまだこれから。

大阪からエールを送る。

 

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