ドキュメンタリーが好き
若い頃からドキュメンタリーのナレーションの仕事がやりたかった。
師匠の槇大輔に憧れたのも、ドキュメンタリーのナレーションが素敵だったからだ。
かつてはゴールデンタイムにもドキュメンタリー番組があり、師匠の声がいつも番組を締めていた。
しかし、その後、時代の流れで各テレビ局のドキュメンタリー枠は、真夜中になってしまった。
たまにスペシャル番組で、冒険家を追ったり、アスリートに密着する番組があるけれど。
いつかドキュメンタリーのナレーションをやりたいなぁ。
思いながら、師匠の元に通うようになった。
夢が叶ったのは今から7年くらい前だっただろうか。
日テレ系の夜中のドキュメンタリーのナレーションを突然頼まれた。
その後、TBS系列のドキュメンタリーにも声がかかった。
TBS系列の方は定期的に依頼があったのだが、何作品かやった後、ちょっとしたトラブルが。
実は私の小さなプライドを揺るがす出来事があり、文句を言ったら、それ以来頼まれなくなってしまった(笑)
この気の強さ、どうにかならんかな(⌒-⌒; )
まぁ、いいや。捨てる神あれば拾う神ありだ。←負け惜しみです
今回、NHK Eテレの番組で朗読してほしいという連絡が来た時、久しぶりに嬉しかった。
ドキュメンタリーで、骨太な内容であること。
しかも、ナレーションではなく、朗読の依頼だったこと。
これが嬉しかった。
「ETV特集」
NHKスペシャルほどではないけれど、地味に人気の番組だと理解している。
在日コリアン2世のヤンヨンヒ監督を追った作品。
私はそのヤンヨンヒ監督のエッセイの一部を朗読する役目だった。
短い文章だし、正直あっという間の収録だった。
ディレクター兼プロデューサーも、1発目の私の朗読に頷いてくれた。
「いいですね」
でもそのあとこう言った。
「なんか、すぐ終わっちゃうのはつまらないなぁ。楽しいからもう一度やってほしい」
それ本音?と一瞬疑ったが、、、
これまでも一緒にお仕事させてもらってるので、本音なのだと思う(笑)
この素直な感じが好きだ。
「もう少しニュアンス変えますか?リクエストあれば」
「じゃあ、もう少しだけゆっくりしてもらって」
「ハイ」
そして、2テイク目。
にこにこしながら
「どうでしたか?」
私に意見を求めてくる。
「よかった気がします」
「ですよね」
そうこうして収録した番組が、今夜放送された。
ナレーションは萩原聖人さんだ。
役者さんというよりナレーターといったほうが良いくらい上手だった。
実は、最後にも朗読の部分があって、けっこう肝なところで
私も気持ち込めて、でも込めすぎないように、読ませてもらったのだが
今朝、プロデューサーから連絡があり
「ごめんなさい。萩原さんのナレーションが最後無いのに気づいて、あそこを萩原さんに読んでもらうことになってしまった」
とのこと。
残念ではあったが、出演シーンがカットになるアルアルみたいなもので、嘆いても仕方ない。
ただ、オンエアを観たら、なるほど。
あそこは萩原さんだよね。そして、距離感バッチリの読みだった。素晴らしい。
メインのナレーターとしてご指名がもらえるほど有名ではなくても
ほんの少しの出番でも、ギャラを払ってでも読んでほしいとリクエストしてもらえたことがしあわせだ。
ドキュメンタリーというのは、いや、もちろん番組作り、VP作りもすべて
ナレーターが登場するまでの経緯がいちばん大変で
多くの人の手、多くの時間をかけて作り上げている。
その最後の最後、ナレーターが作品に命を吹き込む。
この使命感ほどワクワクすることはない。
先日も書いたが、このワクワクと、生まれ変わってもやりたいこと、お金を払ってでもやりたいこと、という点では、ナレーターのお仕事は私の天職であり夢だ。
でも、来世、生まれ変わったときには、すべてAIが喋っているだろうから
やはり今世のうちにもっとどっぷり浸かりたい(笑)
コメントを書く