アルトの世界

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裏声日記

終わりの美学〜うっかりBARは10年の歴史に幕を下ろします。後編

前編はこちら

ようやく副キャプが退院し、店にも顔を出すようになりました。

とは言うものの、長く仕事を休んでいたので、たまに手伝いに来るレベルでした。

さらに

退院後の体調は思うようには良くならず、数ヶ月後には癌が再発。

前回の呑気な入院とは打って変わって、辛い抗がん剤治療がスタートします。

この頃になると

私はもう1人でやっている店、という覚悟ができていて、定期的に後輩にバイトをお願いするようになりました。

店はそれなりに繁盛し、下間都代子の店というイメージになっていきました。

そして

うっかりBARがオープンして1年9ヶ月後の

2015年5月1日

副キャプは亡くなりました。

たくさんの想い出とうっかりBARを残して彼女はさっさとこの世から居なくなったのです。

ステージ1bの人がなぜあんなにあっという間に亡くなってしまったのか。

もっと強く手術に反対したら良かった。

悔やんでも悔やみきれません。

亡くなる4ヶ月前。

どうしてもとよちゃんともう一度旅行に行きたいと彼女は言いました。

私の車で送り迎えし、和歌山県の白浜の素敵な旅館に泊まり、一緒に温泉に入りたくさん喋りました。

遠出したのはこれが最後だったと思います。

「私の結婚披露宴でとよちゃん司会してね」

と約束していましたが

亡くなる前に渡されたエンディングノートには

「私のお通夜とお葬式の司会をしてね」

と書いてありました。

最後までわがままな彼女のために、泣きながら司会をしたのがついこの前のようです。

あれから8年あまりが経ち

いま、お客様のほとんどが、美人の副キャプ、やっちゃんの存在を知りません。

でも、閉店するにあたりどうしても書きたかったのは

やっちゃんがいたからこそスタートした店だったことです。

あの1人きりで苦しかった日々。

やっちゃんの顔が浮かんできたからこそ、私は店をやめられなかった。

やめてしまうと

「とよちゃん私のこと忘れないで」

と、彼女が耳元で囁くような気がしたのです。

今年5月1日。

やっちゃんの命日に、やっちゃんの彼氏や仲間とともにうっかりBARで献盃しました。

「店をやめることにしたよ」

やっちゃんに報告しました。

どうでしょう?やっちゃんはなんて言っているでしょうか。

この10年。うっかりBARではさまざまなエピソードがありました。

事件もありました。

出会いも別れもありました。

イベントもしました。

この店を舞台にした小説も生まれました。

閉店の7月31日まで、やっちゃん、副キャプとともにおもてなしします。

よろしければ会いにきてください。

うっかりBAR キャプテンしもつま&副キャプやすこ より。

追伸

これが美人の副キャプ。やっちゃんですよ。

お見知り置きを。

うっかりBAR閉店当日の様子はこちら

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記念日

トークライブ

Re:1

  1. 河口勝司 2023年7月6日 at 08:13

    きっとなにかしら事情があってのお店だと思ったら、やはりこんな凄いドラマがあったのですね。

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