アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

鴨川のある暮らし

コロナになってからもうずっと叔母に会ってない。

門真にある叔母の高齢者施設では2月頃から面会禁止になり、可能なのは硝子越しにオンラインで会話することだけ。

ところが、アルツハイマーの叔母は、なぜ硝子越しなのか理解できない。

姉と従姉妹が硝子越し面会をしたら

「なんで閉じ込められているの?出して!」

と、興奮してしまい、せっかく会いに行ったのに、かえって辛い思いをさせてしまった。

なので、会いに行けない。

ケアプランには、買い物や散歩の時間が入っているが、コロナ以降はそれもアウト。

小さな施設の中にずっといて、食堂でご飯を食べて、また部屋に戻るだけの日々。

そんなストレスも高まっているのだろう。スタッフの人たちに暴言を吐いたり、蹴ったり手をあげたりすることが増えたらしい。

機嫌が悪くなり、暴れて蹴ってしまう、、、という展開なのだ。

とはいえ、アルツハイマーにも機嫌が悪くなる理由があるはず。

しかし、これがはっきりとは分からないので困る。

で、このままだと施設を退去してもらうことになる。

という文句の電話が私のところに入る。

コロナで大変な中お世話になってはいるが、健常者でも約10ヶ月閉じ込められて散歩もできなければおかしくなる。

散歩代わりの運動など、なにかしら対策を取ってほしいが、なにもやっていないという。

あーーーーもやもやする!

自分で面倒が見られないだけに立場は弱く

あーしてくれ、こーしてくれ、とリクエストは言えない。

このまま施設に閉じ込めていたら何が起こるかわからない。施設も親族にしてもそれは1番怖いことである。

そこで、先々の看取りのことも考えて、特養に移れるなら移った方がいいのでは?

と、親族のLINEグループで提案した。

そして、ケアマネージャーに、京都市内で良い施設がないか探して欲しいとお願いした。

出来れば「鴨川が見える施設」を。

叔母は長年京都に住み、幼い頃から鴨川とともに暮らしていた。

施設に入るまで20年ほど住んだ団地からも、鴨川が見えて、眺めが良いのが自慢だった。

なのに、今はカーテンを開けると向かいのつまらないマンションの景色。

「家に帰りたい」と何度も騒ぎを起こすので、カーテンは閉めたままになった。

「ここは京都だ」と思わせておくためだ。

しかし、アルツハイマーといえど、ずっと記憶が無いわけではなく、たまに正気になる。

そして、正気に戻ると「なんでこんなことするの!京都に帰る!」と怒る。

可哀想だがアルツになって一人暮らしは不可能になったのだから仕方ない。

でも、、本人はアルツの自覚がない。

さて、少しでも早くこの施設から出て行って欲しいのだろう。

ケアマネは積極的に新しい施設を探してくれているようだ。

追い出されるようで腹立つが、良いところが見つかればいいな。

上賀茂あたりでも良い。鴨川がそばにある場所がいい。

もし無ければ、せめて川がそばにある施設。

叔母にとって何が正解かわからないが、今がベストとは到底思えないから。

電話であちらからの苦情を聞き、交渉し、提案し、依頼する。

仕事の合間にそんなことを何度もやっていると、私の中でもやもやが溜まってくる。

LINEグループに共有し、愚痴を書くが、ぜんぜん解決しない。

「代わってあげたいけど、交渉ができるほど頭が回らないから」

とか

「私は施設とすぐ喧嘩になりそうだから」

とか

結局、私に回ってくる。

投げ出せない性格だし、誰かがやらねばいけないし。

コロナのニュースなどを見るにつけ、ついイライラするのは、叔母のことが浮かんでくるからなのだが、イラつくのを抑えるの、必死だ。

めでたい毎日を送っているが、カミサマは呑気な私に「少しくらい大変なことを与えよう」てな感じで定期的に罰を与えてくる。

叔母さんがゆったりとした鴨川の風を受けながら散歩できる日がきますように。

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