アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

昨日のおまけエピソード

蓬莱橋にて。

この作品と向き合うとき、私は母のことを思い出さずにいられない。

2006年4月。初めて語座の舞台に立ったときの作品がこれなのだが
初舞台ということで、母がわざわざ東京まで見に来てくれた。

母に買ってもらった大島を着て、無事舞台を終えると
母が「すごくよかった!」と大絶賛してくれた。
親バカもいいとこなのだが、それでもとても嬉しかった。

このお話面白いねえ。本持ってるなら貸して。

母に言われて貸してあげると、
とても気にいってくれた。
諸田玲子の他の作品も、なかなか面白いのだった。

母との幸せな思い出はこれが最後だ。

その年の夏に愛犬が死んだことをきっかけに変な方向に進んで行ってしまった。

そして翌年の正月早々、母は死んだ。

自分にとってとても大切な作品であるこの「蓬莱橋にて」を
今回またやろうと思ったのはなぜだったっけ。
大阪で初めての公演。
初心を思い出したかったのかもしれない。

実は、昨夜の打ち上げで、出演者がひとりひとり挨拶したのだが
そんな母との思い出話を少ししたら、思わず感極まって泣いてしまった。
今更まさか、と、自分でもびっくりするくらいボロボロと涙が溢れてしまった。

ところが、びっくりしたのはここからだ。

仲間のS君が、私の話を聞いて突然、おいおい泣き出したのだ。
しかもわたし以上に(笑)

たぶん、公演の緊張が溶けたからだと思うが
彼は「すみませんすみません。でも、着物の話があまりにも・・・グスングスン」

私が泣き止んでも、彼はまだしばらくの間
「いや、お母さんが、ほんと、そんな辛い話・・・グスングスン」
泣き続けていた。

S君のおかげで、私は泣き顔が笑顔になり、最後はみんなで彼を指差して笑って
打ち上げは大いに盛り上がった。

あまりにもS君が面白かったので、
素敵な想い出深いエピソードして、おまけの日記。

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