アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

有難うの伝え方

わたしもこの業界、長くなってきた。

最初の事務所を辞めて、グループ・エコーに入ったのは、まだ私が交通情報をやっていた頃で

文章らしい文章のナレーションはできなかった。

それが徐々にいろんな方のご指導をいただいてVPナレーションのお仕事なんかもできるようになり

そのみなさんのおかげで今のわたしがいる。

 

その「いろんな方」の中のお1人がKさんだ。

Kさんはディレクターさんで、気さくでお洒落。

私のことを信頼してくれて、お仕事もなんどもご一緒させてもらった。

飲みにも行った。

Kさんがご指名してくれた仕事で、Kさんが退職してからいまだに続いているものある。

わたしも一時期通っていたジャズbarに来て

趣味のサックスを楽しんでいたKさん。

いつもニコニコ笑ってる印象が強い。

 

そのKさんが1年余りの闘病の末、逝ってしまった。

 

Kさんと同じく、若いころからわたしを育ててくれたスタジオの社長さんから連絡をいただき

今夜、お通夜に参列した。

棺の横に、愛用したサックスが飾られていた。

棺の中にはKさんお気に入りのハンチング帽。

そう。Kさんは帽子のお洒落も得意だった。

 

こじんまりしたお通夜だったこともあり、「ぜひ食べていってください」と言われ、わたしも会食にお邪魔した。

初対面の奥様に自己紹介すると、たいそう喜んでくださった。

ナレーターで参列したのはわたしだけで、ちょっと珍しそうだった。

若い頃から一緒にお仕事させてもらった話を伝えると

Kさんの人柄そのままにやはり気さくな奥様は楽しそうに涙を拭いた。

スタジオの社長さんも、その仲間たちも、一緒に楽しい思い出話を交わす。

 

Kさんへの感謝の気持ちをこの会食の時間を通じて贈りたかった。

代わりに奥様に伝えたかった。

厚かましくも同席させてもらえて良かった。

 

社長さんたちはまだもう少しここにいらっしゃるということだったので

わたしは先に失礼することに。

帰り際、もう一度Kさんにご挨拶に行った。

 

痩せて小さくなってしまったKさんではあるが、穏やかな表情だった。

今あるのはKさんのお陰です。ありがとうございました。

また会う日まで。

 

また会うと思えるから、寂しくないね。

 

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