アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

毎日日曜日

施設の叔母に会いに行った。

スーツを着て、イヤリングをして、化粧してベッドの上に座っていた。

「あら!どうしたの?」

私たちの突然の来訪に喜ぶ叔母。

「今日は何曜日?」

日曜日だよ。

「あらそう。まぁ、叔母さんは毎日日曜日だけどね(笑)」

ほがらかに笑った。

これが本当にアルツハイマーの人間なのか?首をかしげてしまう。

「叔母さんねぇ、とうとうこんなことになってねぇ。刑務所みたいなものよ」

今いるところを理解しているようだ。

その時、叔母が飾って欲しいと言った、祖父の写真や叔父の写真、家族写真が全て無くなっているのに気づいた。たくさんあった絵の額も、中身が外されて椅子の上に積み上げられてある。フランス人形も、日本人形も。

これは一体?

唯一、祖母の笑顔の写真だけ飾ってあり

「おばあちゃんとね、いつもお喋りしてるのよ」

と言った。やはり最後は母親への仰慕の想いが強いのだ。

初めはかなりまともな会話であったが

「ここに来てもう20年になるかしら」

と言うのを聞いて、あ、叔母さんは京都の家にいるつもりなのだ、とわかった。

「眺めがいいしね。向こうに山が見えて、お日様がよく入って」

カーテンは閉めたまま。叔母に見えるカーテンの向こうの景色は東山の眺めらしい。

一緒に買い物に出かけることにした。

脚が弱くなった。私たちの真ん中に入ってそれぞれの腕にしがみついてゆっくり歩く。

ほんの一瞬でも、いま、叔母が安心できる温もりを与えられるなら。。。

買い物して、部屋に戻ってお茶を飲みながらお喋りした。

同じ話がループするのに、飽きずに付き合ってくれる相方に感謝。

たった2時間ほどの滞在を経て施設を後にした。前みたいに後をついては来なかった。

家の玄関で見送る、、、そんな雰囲気で少しだけホッとしたけど。

施設を出ると、果てしなく消耗している自分がいた。どっと疲れが出て、胃が重くなった。

辛いのは叔母なのに。ごめんなさい。

「ボンって犬がいたでしょう?私は犬が大好きなの。」

人形たちは片付けられていたが、犬のぬいぐるみだけはちゃんと飾ってあった。

叔母の心を癒すヒントは犬なのかもしれない。と思った。

誰か助けてください。

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