アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

サヨナラまでの過ごし方

阪急百貨店の靴売り場。

当時、少し高めで個性的な靴ばかりを扱っている店があった。

そこで出会ったショートブーツ。

履いていると「かっこいいね」と声をかけていただくこともしばしば。

長さも形もデザインも履き心地も気に入って愛用し始めて、、、

もう10年以上は余裕で経ったかしら(笑)

雨にも負けず雪にも負けず、秋口から春まで大活躍。

このブーツを履いてあちこち旅行にも行ったっけ。

その時々の想い出が蘇ってくる。。。

そのショートブーツが、いよいよヤバイ状態になり、いやもう3年くらい前からヤバくて、代わりになりそうなブーツを探し続けるものの、全く巡り合わないのだ。

違う!ない!

阪急百貨店の店舗もすっかり変わり、あのブランド?メーカー?がどこかも分からず、ほかの百貨店にも行った。神戸にも行った。でも見つからない。

雰囲気だけでいいの。似てたら。

運命の出会いなんて、そうそう無いのよね。靴も人との出会いも同じ。

これ、、、修理できるかな?

とうとう新しいものを探すのは諦めることにした。

で、以前から気になっていた靴の修理屋さんに持って行ってみたのだ。

うっかりBARの近所のここ。

シュッとした、感じの良い男の子がやっている。

店内もお洒落だし、皮製品が得意そう!!!な匂いがする(笑)

「これ、、、ですか、、、。」

私のブーツをくまなくチェックして

「うーーーーーーーん」

彼は唸った。

「そうですねぇ、ここまでくると、これをこうして、、、、」

そして再び

「うーーーーーーーーん」

さらに長く唸った。

「部分的に新しくなってしまいますが、、、いや、あ、うーーーーーーーーーん」

やっぱり無理ですか?

「修理というのとちょっと違うんで、、、ここをこうして、、、うーーーーーん」

なんて素敵な人なんだろう。

私の気持ちを察して、一所懸命考えてくれるのだ。気の毒なくらいに。

何分くらい経過しただろうか。

「、、、やっぱり、安請け合いしてダメだったらいけないので、すみません!」

本当に申し訳無さそうに彼は言った。

ただ、こう付け加えたのだ。

「直してくれる店があるかもしれないので探してみてください。それでもし見つからなくて、やっぱりダメ元でも!となったら、僕やってみますのでまた持ってきていただけますか?」

素敵だ。

ありがとうございます!すみませんでした。時間取らせて。

「せっかく来ていただいたのにすみません」

お互い謝って(笑)店を出た。

いよいよヤバくなったこのブーツをここ数日履かずに置いていたら、なぜかさらに老化が進んでいたことにさっき気付いた。

たった数日。ついこの前まで履いていたのに。

人間と同じだ、、、と思った。

ほかの店に持っていっても、もう手遅れかなと思う。

そして、さっきのお兄さんにお願いするのは忍びない。

お別れのときがやってきたのだ。

残念だけど。今までありがとうございました。

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