アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

気のせいですか?

私が彼にヒメを紹介したのは2012年の終わりだった。

気ままな独身生活を送っていた彼だが、可愛いヒメを見るや虜となり、、、

それから約7年。

ラブラブな毎日を過ごしていた。

ヒメというのは猫である。

このヒメ。人見知りで、私がキューピッドなのにもかかわらず、お家を訪ねても挨拶もそこそこ(笑)

まったく〜つれないわね。

そのヒメが、夏前から腎臓病になり病院通いとなった。

もう半年もたないとの宣告。。。

「会いに来るなら今のうちだよ」

この言葉。私には「会いに来てほしい」と聞こえた。

今日、ようやく都合があったのでお家に行くと、、、

相変わらずとても綺麗なヒメであるが、身体はすっかり痩せてしまっていた。

あんなに人見知りだったのに、なぜか今は性格が変わり、私にもスリスリしてくれる。

ヒメを撫でながら

「なかなか食べてくれなくてね」

病状を説明する彼の目が

ふと、うるんでいるように見えた。気のせい?

私はヒメを膝の上に乗せた。

軽くなっちゃったね。。。

「あのまま保護しなかったら3年ほどの命だったところを貴方のお陰で今まで生きられたんですよ。ってSさんがね。」

Sさんというのは、ヒメを最初に発見した私の友人で

その後、私がヒメをもらってくれと彼に頼んで、お見合いが成立したのだった。

そんな話をしているうちに再び瞳がまたみるみるうるんできて

あ、やっぱり気のせいではなかったのか。と思った。

先程から何度となく、彼は涙を浮かべては我慢しているのだった。

すでに数十万円の治療費をかけ、ヒメのためなら自分の飯などどうでも良い、と言い、仕事もヒメ中心。

60まわった独身のオッサンが、愛猫の死を前に、こんなにも辛そうに目を潤ませている。

大丈夫?

ヒメ。頑張って生きてね。彼のために。

彼がヒメのために色々世話してるんじゃないよ。ヒメが彼のために存在してくれてるんだよ。彼のことよろしくね。

私が声をかけると、彼は再び瞳を揺らしてヒメを何度も撫でるのだった。

さてそろそろ、、、

私が帰ろうとすると、またヒメの話や近所の地域猫の話をし始めるので帰れない。

やっぱりこの人は私に「ヒメに会いに来てほしい」と思っていたと、確信した。

そしてこの辛さを共有する人が必要だったのだと思った。

出来れば今日だけではなく、、、。

ヒメと2人きりの時も大切だが、だれかに別れまでのカウントダウンを一緒に過ごして欲しいと思っている。

1人でペットを飼い、1人でその生涯を看取る。

重い。

ペットも人間も一対一で介護するのは重い。

ヒメ。

まだ7歳だよ。なんとかならないのかしら。

 

なにか良い治療はないのかしら。

ヒメに奇跡は起こらないかしら。

ペットとわたし。第3章。

 

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