アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

曼珠沙華一輪

今日は朝から亡くなった副キャプのお母さんに会いに行った。

お母さんと会うのはかれこれ2年以上ぶりである。

副キャプを亡くしたあと、お母さんは2回の脳血栓になり、さらに息子までもガンで亡くした。

今は一軒家の自宅に1人で暮らしている。もう1人の息子は東京にいる。

時々のデイサービス。あとは近所へ買い物。

寂しいときは、私に電話をかけてくる。

ただ、病気の後遺症で言葉がうまく出てこないので、アレソレの繰り返し。根気よく聞かないと話が理解できない。電話だと特に伝わらないのがもどかしい。

涼しくなったら会おうねと約束していた。

そして今日、約束を果たすためお母さんに会いに行ったのだった。

お母さんの自宅を訪ねるのは初めて。

この春、新大阪駅から新しく繋がった大阪東線に乗れば、乗り換えなしの一本で母の最寄り駅に着くらしい。

はじめての大阪東線。

 

私の顔を見るやお母さんははしゃいで手を叩いて喜んだ。

なんて可愛いのだろう。あー来て良かった!

1人だと普段は家の周りしか行けないので、一緒に電車に乗って、ひと駅向こうの大きな街へ出てみることにした。

手押し車を頼りに歩くのだが、意外と足取りは軽い。

言葉が出てこないものの、喋りたくて仕方ないという様子で、私はうんうんと聞く一方である(笑)

駅に来るのも久しぶり、電車も久しぶり、とのことで

お母さんは変わってしまった街並みをとても珍しそうに眺めながらテクテク歩いた。

私はと言えば、話を聞きながらお母さんの上に日傘を差して、ペースを確認しつつ歩みを合わせる。

叔母を施設の外に連れ出すときは、腕を組んで、ゆっくりゆっくり歩くのだが、お母さんは労わり過ぎるのは嫌なタイプかな?と思い、時々手を貸す程度にしてみた。

介助というのは難しい。

いくつになってもプライドはあるし、気を遣い過ぎるのも良くない気がする。

お母さんに案内された店でランチを食べのだが、どうしてもご馳走したい!というお母さんの言葉にも素直に甘えることにした。

その後もお母さんのペースで買い物にお付き合いし、銀行に寄ったりして、、、

かなり余裕を持って予定を立てていたが、さすがに次の約束の時間が迫ってきたときは焦った(笑)急かすのは絶対やめたかったので、焦っているのは秘密にしてお付き合い。

お母さんがやりたかったことすべてをクリアし、お家に送って荷物を部屋に運んだところでちょうどタイムアップ!

お母さんは何度も何度も「ありがとう」と繰り返し、玄関先でずっと私に手を振った。

可愛い。

振り返るとまだ立っていて「バイバーイ」と言った。

副キャプが帰るときも、きっとこんな風に「バイバーイ」と2人でやっていたのだろうと思って、急に悲しくなってしまった。

お家を訪ねたとき、玄関先に咲いていた一輪の曼珠沙華が印象的で、お母さんが表に出てくるのを待つ間にパシャリ。

ボケちゃったけど(笑)

帰り道。その曼珠沙華をふと思い出して

なんか、孤独だけど可憐に花を咲かせているのがお母さんの雰囲気に似てるなと思った。

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