アルトの世界

ナレーションと語り*

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裏声日記

美しいシーン

私には子供がいない。

でも、教え子はたくさんいる。

子供ほど責任はないけれど、その子が悩んでいたら一緒に考えるし、喜んでいたら一緒に喜ぶ。

そんな気持ちになれる教え子がいる。

中にはナレーターの道を諦めてしまった教え子もいるので、一緒に喜んであげられなかったパターンもあるが、本人の選んだ道を応援するし、もしまた必要があれば頼ってもらって構わない。

と思う。

さて、そんな中「初めて仕事がもらえた」とか「この前教えてもらったことが生かせた」とか「仕事先で褒められた」とか嬉しい報告をくれる教え子もいて、こちらもハッピーになる。

私はドライな人なので、こちらからどうだ?と連絡はしないが、連絡をもらえるのは嬉しいに決まってる(笑)

今夜のうっかりBARに、その教え子が1人でやってきた。

最近仕事がもらえるようになったとのことで、たまたま居合わせたベテランナレーターのI 君などは

「俺は仕事が無いのに!なんでや!(笑)」

自虐ネタで笑わせてくれた。

周りのお客さんもそんな初々しい話に興味津々。

私も鼻が高い。

「今日は先生に渡したいものがあって来たんです!BARで1人飲みとかやったことないし、またレッスンでお会いしたときに、と思ったんですが、なかなか会えないから」

と言って可愛らしい箱を手渡してくれた。

「遅くなってすみません。お誕生日プレゼントです!」

毎年、忘れた頃に誕生日プレゼントをも、うことがあるが、彼女からもらうこと自体が意外!

わーーーありがとう!なにかな?

開けてみると、、、

「先生、いつも綺麗なネイルしてるので、オイルです。いくつか香りの種類があって、あ、これいいなと」

とても上品な香りのオイルだった。

「香りによって名前が違うんですけど、先生に渡したい!って」

どれどれ?

本体になにか書いてある。

えーっと、りすぺくと、、ゆー?

「ハイ」

私がそれを読み上げた瞬間、みんなが

「おーーーーっ」

と声をあげた。

I 君は思わず「美しいシーンだ」

と言った。

幸せだ、と思う。

彼女だけでなく、これまでも教え子たちが気を遣ってプレゼントをくれることがあり

そのたびに嬉しいやら恐縮するやら、、、なのだが

くれる側の、教え子側の気持ちはとても純粋。

照れ臭くて、私はついつい

アナタは間違いなく売れるわよっ!(笑)

などと言って、とりあえず皆んなを笑わせてしまったが

先のI君はいたく感動したらしく

「この話を題材に書いていいですか?」

と真顔で言った。

彼は短編も書くのだ。

「こんなピュアで美しいのは書きたくなります」

緊張しながらも、私のために1人飲みデビューした教え子は

周りの業界人からたくさんのアドバイスをもらい、お土産を胸に抱えて帰ってくれたようだ。

私も、プレゼントはもちろん素敵なお土産付きで、幸せな夜だった。

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